新事務所に於いて解体時の廃材を中心にリサイクル材による内装を試みた。その一環として、断熱材もリサイクル材を使ってみたいと考え、自然素材の断熱材として流通もしているウールに着目した。廃棄衣料への関心もあり、また既存RCでの内断熱となるため、調湿作用を持つウールが結露に強い点なども考慮した。
使用済みのウールセーター(70%以上)を回収し、ホウ酸系防虫防カビ加工をし、圧縮しロール状にして芯材に刺し、密着させて壁に取り付ける。色とりどりのセーターをうっすらと透かす麻布でカバーする。
東京電機大学の西川研究室に測定・分析頂き、断熱等級4程度の断熱性能があることが報告された。セーターや麻というマテリアルが心理的に与える影響と体感温度との関係なども西川研の卒業論文のテーマとして実験された。
また、この試みに興味を持って下さった、福井県越前市のまちづくり武生さんにお招き頂き、地域で集めた使用済ウールセーターを使って、地元の高校生とウール断熱材のワークショップを行った。圧縮方法が改善され、ウールを透かす表面材として越前和紙にて仕上げるなど、地域性を反映させながらアップデートされた。
セーターを集める過程で、捨てきれないセーターにまつわるストーリーを含めて引き継ぎが行われることで、リサイクル問題の共有や、地域的な交流が行われ、同時に一期一会の色彩が現れるインスタレーション的なプロジェクトになっていることを興味深く感じている。
引き続き、セーターを募集して、シェアオフィスのその他の非断熱箇所の断熱を進める予定で、その過程で施工方法などをアップデートし、より効果を高める為の測定・実験も継続していきたい。
事務所外でも、まちづくりの一環としてワークショップなどで広めていけたらと考えている。